小林敏明教授の「ライプツィヒの街から 23 美しき青きドナウ?」

こんばんわ!モンです。

 

ドイツの小林敏明教授からレポートが届きましたよ!

本日は「ロマ(ジプシー)」について、実は私「ロマ」ちょっと興味が昔からありまして・・・。

 

それでは、教授!本日もよろしくお願いします!!!

 

 

ライプツィヒの街に僕がずっと好奇の目を向けている人物がいます。写真のアコーデオンのオジさんです。 

僕はこのオジさんをもう10年以上観察しづけているんですが、驚くべきは彼のアコーデオンです。「スバラシイ!」の正反対で、この10年まったく進歩というものがないのです。得意の曲は調子はずれの「美しく青きドナウ」、どうしてこれほど下手に弾けるのか、しかも毎日弾いていてどうして一向に上手くならないのか、とにかく「天才的」に下手なのです。

 

ところで、このオジさん何でこんなことをしているかというと、言うまでもなく、こうやって弾きながら道行く人から小銭をもらって生活しているのです。

 

つまり、一種の「プロ」なわけですね。ライプツィヒのみならずヨーロッパにはこういう物乞い風路上音楽家は少なくありません。

 

なかには同じアコーデオンでも、難しいクラシック曲などをじつに見事に演奏するすごい人もいます。

 

いつぞやもベルリンの地下鉄に乗ろうとしたら、ホームの端でバッハのフーガを演奏している人に出くわし、圧倒されました。

地下鉄のホームがにわかに教会と化して、まるでオルガンの迫力です。

電車を待っていた乗客たちも電車をわざわざ見送って演奏に最後まで聴き入り、終わると同時に拍手。

もちろん僕もそのうちの一人でした。

 

多くはロシアあたりから流れてきた不遇な音楽家たちで、こういう形で身過ぎ世過ぎをせざるをえなくなっているんですね。世相の崩れはまず最初に芸術家たちのところに表われますから。じつにもったいない限りです。

 

こういう本物のプロ崩れと比べると、さきのオジさんの劣悪な演奏がいっそう目につきます。そもそも、これほど下手なものを人前で演奏などして恥ずかしくはないだろうか、と思うのは多分僕だけではないでしょう。

 

じつはこのオジさん、いわゆる「ロマ」と呼ばれる放浪民族の一人なんですね。昔は、「ツィゴイナー」とか「ジプシー」などと呼ばれていましたが、今日ではこれらの表現は差別用語とみなされ、「ロマ」「ジンティ」と呼ばれます。ロマの人たちが多いのは南欧から東欧で、スペインの有名な観光地を訪ねたりすると、幸せを呼ぶからと小さな木の枝を売りつけに寄ってくるオバさんたちに囲まれますが、彼女たちもそうですね。

 

この放浪民族は昔から差別されつづけ、そのこと自体が彼らのアイデンティティになっている稀有の民族と言っていいでしょう。しかもスリ、カッパライ、ヒトサライといった汚名を着せられての毎日です。

 

かといってこれがまったく無根拠な濡れ衣かというと、そうでもないようで、僕自身ベルリンの街中でロマの女の子たち5、6人に囲まれて上着のポケットに手を突っ込まれたこともあります。一説には彼らのファミリーではオヤジの言うことが絶対で、子供たちにそういう「ノルマ」が課せられている家庭もあるという新聞記事を読みました、悲しい話だけど。

 

そんな矢先に先日ギリシアで、あるロマの家族の中に金髪の少女が見つかり、はや誘拐かなどという騒ぎがヨーロッパ中を駆け巡りました。どうやら真相は、ギリシアに不法入国で出稼ぎに来ていたブルガリアのロマの女性が滞在中に生んだ子で、不法入国だったため出生届もできず、そのままギリシアのロマの家族に売ってしまったということのようです。

 

いずれにせよ、厳しい話ですね。ちなみに、僕の同僚ドロテアはブルガリア籍ですが、彼女が教えてくれたところによると、2050年にはブルガリアにおけるロマの人口比率が30%を超えるという統計もあって、ブルガリア人の中に危機感と反感が高まっているということです。

そういうこともあって、僕としてはあの天才的に下手なアコーデオン弾きのオジさんをムゲにできないのです。あのテーマソング「美しく青きドナウ」にはきっと彼の生まれ育った土地へ想いが込められているのでしょう。そう考えると、あの「下手さ」には独特の哀調が感じられます、などとつい言いたくなるところですが、残念ながらその哀調も感じられないほど下手!

 

有名なツィゴイナーヴァイゼンもハンガリアン・ラプソディももとはといえば彼らの祖先の生み出したものですからね。金を貰おうというなら、やっぱりもうちょっと「プロ」としての意地を見せなくちゃ。

 

でもね、今回は被写体になってもらったので、特別に1ユーロあげました。

 

 

アハハハハハ教授ありがとうございました〜

途中「ロマ」の話ではつい考えさせられましたが、オチで笑っちゃいましたよ

 

しかし10年間まったく進歩のない「美しき青きドナウ」とはドナウ(寒っ・・・)ものか一度聴いてみたいものです。

 

天才的に下手なアコーディオンオジさんの上の写真のショボクレ(観衆は鳩一羽 笑)さ加減と下の写真のたぶん1ユーロ後のポーズを決めるオジさんの笑顔に哀愁を感じました!

 

教授ありがとうございました!

次回も冴えたドイツレポート楽しみにしています。

 

 

 

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明日11月17日(日)は、買付け&急用の為

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